A2ミルク人気の理由

 

昨今話題になっているA2ミルク。大畑大介商店は2022年から注目してきました。

ニュージーランドやオーストラリアから広まり、今や世界的に注目されています。

注目を集めている最大の理由はお腹を壊してしまう人でも、A2ミルクなら飲みやすい、といわれているからです。

 

※A2ミルクについての2022年の記事はこちら

 

 

牛乳に含まれるタンパク質、β（ベータ）カゼインはA1型（A1A1型、A1A2型）とA2型（A2A2型）の2種類に分けられます。

βカゼインは209のアミノ酸の繋がりでできていますが、67番目のアミノ酸の違いでA1とA2に分かれます。

 

■βカゼインA1型・・・67番目のアミノ酸がヒスチジン

■βカゼインA2型・・・67番目のアミノ酸がプロリン

 

ほんの僅かな違いですが、A1型のβカゼインは、消化酵素の作用で生じる特定のペプチド（アミノ酸が結合したもの）が消化器系の不快感に関係するという報告があります。一方、A2型のβカゼインはそのペプチドを生成しません。

そのため、β（ベータ）カゼインA1型が原因で消化不良を起こしてしまう人は、A2ミルクなら飲める可能性が高いのです。

 

※当ブログは2024年1月時点の情報となります。A2ミルクについては多くの研究が進行中であるため、最新の情報をご参照ください。

 

 

A2ミルクはどんな味？

遺伝子の違いだけなので、味や風味は一般的な牛乳と同じです。

つまりA1タイプかA2タイプかを味で判断することはできません。

 

A2ミルクを飲んでみたいという方は、一般的な牛乳を選ぶ時と同じように風味が好みのものから選ぶと良いでしょう。

 

 

乳牛の種類

ホルスタイン

 

一般的な牛乳は白黒模様のホルスタインの牛乳。日本の乳牛は約99％がホルスタインで、約135万頭が飼育されています（令和5年時点）。

ホルスタインは搾乳量が多いことから広まった種類で、約4割がA2型の遺伝子を持っています。

 

②ジャージー

 

残りの1％のうち約0.8％がジャージー牛で、約1万頭が飼育されています。

イギリス領のジャージー島原産の牛で、ジャージーミルクはイギリス王室御用達だったことでも知られています。

茶色い毛並みが特徴で体は小柄。

ジャージーはA2型の遺伝子を持つ牛が6～7割ほどいます。

 

③その他

その他、いずれもヨーロッパ原産のブラウンスイス種、ガンジー種、エアシャー種がわずかですが飼養されています。

 

 

 

須藤牧場のA2ジャージーミルク

 

千葉県館山市で大正時代から始まり100年の歴史を持つ須藤牧場さんがA2ミルクの販売を開始されると聞いて、大畑が取材に伺いました！

現在はホルスタインとジャージー合わせて110頭が飼養されています。

 

大畑に興味津々のホルスタイン牛。思わず自撮りモードに。

 

若き4代目牧場主、須藤健太さん。牛たちには一頭一頭に名前が付いていて、須藤さんは全員の名前を覚えています。ユニフォームも牛とおそろい！

 

ジャージー牛乳ってどんな牛乳？

まず、ジャージー牛乳がどんなものかを解説！

須藤牧場では昭和時代からジャージー牛の飼養を始め、現在は40頭ほどいます。

先に少し触れましたが、ジャージーミルクはホルスタインと比較して以下のような特徴があります。

 

①乳脂肪分が多い

②乳タンパク質が多い

③無脂乳固形分（牛乳中の水分と乳脂肪以外の成分）が多い

 

須藤牧場のジャージーミルクは、乳脂肪分約5%、カルシウムは一般的なミルクの約1.3倍です。

 

このようにジャージーミルクは栄養価が高いため、甘みやコクを感じる濃厚な味になります。

 

毎日飲む牛乳で沢山栄養を摂りたい方や香り、味が濃い方が好きな方にはジャージーが、

さっぱりした味がお好きな方はホルスタインの牛乳がお勧めです。

 

乳脂肪分が多いジャージーミルクはノンホモ製法の場合、クリームが浮いてくることがあります。気になる方は飲む前によく振ってください。この写真は冬に撮りました（冬はミルクが濃厚でクリームが多い）。

 

 

ジャージーミルクが高価な訳

ジャージーミルクは栄養価も味も特に優れた牛乳ですが、乳量はホルスタインよりも少なく、飼養頭数も少ないので希少なミルクといえます。

また、同じ手間で乳量が少ないということは、必然的に価格が高くなります。

 

 

希少なジャージーのA2ミルク

須藤さんが販売されるのはそんなジャージーミルクのA2ミルク！

 

NEOGEN社のゲノム検査でβカゼインA2型のジャージー牛を選別し、A2ミルクを搾乳しています。

搾乳はA1ミルクと混ざらないよう分けて行う必要があり、手間とコストが掛かります。

 

A2ミルクの認知は広がり続けていますが、もともと希少なジャージーミルク。そのA2ミルクはまだまだ市場で多くは出回っていません。

 

 

そんな貴重なA2ジャージーミルクをこの度、大畑大介商店でも販売できることになりました。

 

ジャージーのA2ミルクというだけでもすごいのですが、須藤牧場には推しポイントがまだまだあるのでご紹介しますね！

 

 

須藤牧場ではA2ジャージーミルクをさらにおいしく飲んでもらうため、こんな工夫もしています。

 

①低温殺菌ミルク本来の風味（香り、甘さ、コクなど）を活かすため、低温殺菌（約68度で30分殺菌）を行っています。

 

②ノンホモ製法

より生乳に近い美味しさを提供するため、ホモジナイズ（☆）を行わないノンホモ製法を採用！

 

 

③超新鮮

 

 

須藤牧場のミルクが美味しい理由

須藤牧場のミルクはどの種類も特別な美味しさがあります。

濃いのに後味にしつこさはなく、お料理に使うと期待以上に美味しく仕上がったり・・・。

美味しいミルクは須藤牧場のこんな取り組みから生まれるのかもしれません。

 

①放牧場がある

放牧場のある牧場は実はそれほど多くありません。須藤牧場は認定放牧場を持つ千葉県唯一の牧場です。

牛たちは思い思いに遊んだり、牧草を食べながらリラックスして過ごすことができます。

 

②牛たちの飲み水が美味しい

房総半島の地下水をくみ上げて飲み水にしています。きれいな飲み水は牛にもミルクにも大切ですよね。

 

③フリーストール牛舎を採用

仕切りがなく吹き抜けになっている牛舎です。

 

仕切りがない→牛たちが自由に歩き回れる

吹き抜け→夏は暑さ対策に（牛は暑さに弱い）

 

④牛のベッドに山砂を使用

牛たちは眠るだけでなく消化のためにも横たわって過ごす時間が必要です。

コストが掛かるというデメリットはありますが、山砂は雑菌が繁殖しにくいため乳房炎などの病気を防ぐことができます。

また、牛たちが横になったり立ったりする時は山砂があることでグリップ力が生まれ、ケガの防止になります。

夏場はひんやりとして牛たちには快適なベッドに！

 

須藤牧場の放牧場で過ごす牛たち

 

 

 

飼料へのこだわり

須藤牧場は飼料も自家生産しています。

牛のエサのほとんどが輸入飼料という牧場も多い中、須藤牧場は約35年前から自家飼料に取り組んでおり、輸入飼料の割合は約15％ほどです。

 

しかも環境にも優しい循環型酪農モデルを実践されています。

 

つまり、牛たちのたい肥を使ってサイレージ（☆）の材料となる植物（デントコーンやソルガム）を育て、その植物でできたサイレージを牛が食べ、できたたい肥はまた植物の栄養となります。

こうしてできたサイレージはコンテストで何度も受賞しているというので、その品質の高さがうかがえます。

 

質の高い飼料は牛たちがよく食べ、美味しいミルクができます。

飼料が良い事は美味しいミルクの絶対条件なんですね。

 

☆草や他の緑の飼料を発酵させて作られる飼料のこと。発酵によって長期間保存ができるため家畜に年間を通して餌を提供することができる。

 

 

牛たちの健康へのこだわり

須藤さんによると、健康な牛のミルクは白血球（体細胞数）が少なく、雑味がなく美味しいそう。逆に体調が悪いと体細胞数が増え、ミルクは美味しくなくなってしまいます。

だからこそ須藤牧場では牛たちのストレスをできるだけ軽減し、健康で幸せに暮らせる環境を整えることで、美味しいミルクを生み出しているんですね。

 

実はこの考え方は「アニマルウェルフェア（動物福祉）」といって、酪農界では世界的なトレンドです。

 

人と動物のWin Winの関係と言えるのではないでしょうか。

 

 

 

須藤牧場のフリーストール牛舎

 

須藤牧場の牛たちはみんなリラックスして幸せそうに見えました

 

お米や卵と同じように食生活の基礎となる食品である牛乳。

飲みたいと思えばいつでも安くすぐに買えます。

しかし「安くて美味しい牛乳がいつでも買えること」は、実はいつまで続くかわからないところまで来ているのをご存知でしたか？

 

→続きはこちら

 

 

 

おまけ

須藤牧場には2023年12月にカフェがオープンしました。須藤牧場こだわりの美味しいミルクを使ったメニューがいただけるのはもちろん、カフェの隣には放牧場があるのでミルクを提供してくれる牛たちを眺めることもできます。

 

店名は「カーフハッチ　ヨーヨ」。

 

ミルクシェイク。元々のミルクが美味しいとシェイクってこんなに美味しくなるの？！と驚きました。須藤牧場のミルクは幸せの味！

 

 

 

 

 

参照

＜文献（機関誌、雑誌を含む）＞

「酪農乳業の危機と日本酪農の進路」小林信一編著　2011年

「乳の化学2015年」上野川修一編　

「牛乳が食卓から消える？酪農危機をチャンスに変える」　鈴木宣弘著　2016年

日経ヘルス2024年冬号

現代農業2024年2月号

MILK CLUB vol.133、135～138

 

＜サイト＞

農林水産省HP

日本A2ミルク協会HP

日本乳業協会HP

全国飲用牛乳光栄取引協議会HP

中央酪農会議HP

関西畜産学会HP

岡山大学大学院環境生命自然科学研究科研究紹介

 

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この記事を書いた人

うどん県出身。

宝飾品会社、大手テレビ通販会社勤務を経験したのち、不思議な縁に導かれ20数年暮らした東京から大阪に移住、大畑大介商店の担当となる。

大畑も認めるラグビーマニアで、好きな選手は２００人ほどいるが現在注目しているのはアントワーヌ・デュポンと李承信。